Otogi Blog

組曲「寿ぎ」〜にっぽん祝い歌〜 初演によせて

胡弓と作曲担当の木場大輔です。ここ2ヶ月ほど、日本の祝い歌による組曲の作曲に取り組んでいました。
祝い歌は、今も盛んに歌われている地域は限られていますが、祝いの場には欠かせないものでした。調べれば調べるほど奥深く、資料集めから作曲まで本当なら2年がかりで取り組むような内容を、頑張って2ヶ月で何とか仕上げ、明日(!)の学園前ホール公演で初演を迎えようとしています。
プログラムより、組曲「寿ぎ」の解説をひと足早く公開します。
ご来場予定の皆さま、もしご興味あればネットや動画サイトなどでもこれらの祝い歌を検索してみて下さい。今を生きる祝い歌の光景を手軽に垣間見ることができるかもしれません。

◆組曲「寿ぎ」〜にっぽん祝い歌〜 編曲:木場大輔
祝いの場に欠かせない祝い歌。地元共同体の皆で唱和する歌(I.III.V)と、半職能的な芸能者が「マレビト」として訪れ祝福する歌(II.IV)を基に、器楽の組曲として構成した。
選曲にあたり、次の二点を重視した。なるべく、レコードやマスメディアによらず口伝えによって広まり受け継がれた伝統的な祝い歌であること。地域に深く浸透している、または他地域・他芸能に大きな影響を及ぼした歌であること。
有名民謡だけではない、にっぽんの祝い歌の豊穣な世界に、新時代を迎え今一度、脚光をあてたい。( 木場大輔 )

I.「めでた」 岐阜県民謡(高山市)「めでた」より
飛騨高山での宴席に欠かせない祝い歌。この歌が唱和されるまでは自席から立ち歩くことが許されないという。尺八が奏でる無拍節の主旋律を、雅楽やインド音楽の手法を取り入れた、胡弓の持続音や、琵琶と十七絃箏の分散和音が彩る。

II.「萬歳」 愛知県民謡(知多市)「御殿万歳」より
ポンと鼓を打って正月を寿ぐ万歳は、千秋万歳を演じる京の陰陽師が豊臣秀吉により尾張・ 三河に追放されたことから両地で発展したという。特に尾張万歳はやがてこんにちの漫才のルーツにもなった。ここでは尾張万歳の代表的な演目、御殿万歳を取り上げた。前半は「柱立て」、後半は「七福神囃子」と呼ばれる。胡弓が奏でる主旋律をもとに、次第に躍動的に全体のアンサンブルが展開する。

III.「まだら」 石川県民謡(七尾市)「まだら」より
玄界灘の馬渡島(まだらとう)の古民謡が船乗りによって北陸に伝わり、石川県の七尾、輪島ほか福井県や富山県で祝い唄として根付いたもの。
「めでためでたの若松様よ 枝も栄ゆる葉も茂る」の歌詞を、厳格な手もみの手拍子を伴いつつ、五分前後かけて歌う。大らかなリズムに胡弓の旋律と尺八のハーモニーを乗せ、バレエ曲「ボレロ」のような反復の心地よさと雄大さを意識した。

IV.「大黒舞」 鳥取県民謡(鳥取市)「円通寺大黒舞」より
鳥取市円通寺に江戸時代から伝わる円通寺人形芝居は、歌と三味線、胡弓、太鼓に合わせ三人遣いの人形を操り、農閑期に諸国を巡業した。大黒舞はそのレパートリーのひとつ。躍動的なリズムにのせ、各楽器の短い独奏をはさみつつ展開する。

V.「エイショーエ」 福岡県民謡(福岡市)「祝い目出度」より
博多のハレの舞台に欠かせない祝い歌で、博多祇園山笠で歌われるほか、会合や宴席は「祝い目出度」の唱和に続き「博多手一本」で締めるのが通例とされる。本組曲の中では比較的知られた歌だろう。中盤、歌の旋律を発展させた琵琶と十七絃箏のスリリングな掛合いが聴きどころ。終曲部分は手一本の掛け声とリズムを基にしている。博多では手一本のあとの拍手は不作法とされているそうだが、本作ではあくまで楽器による旋律なので、演奏が決まった時には、遠慮なく拍手を送って頂きたい。

映像

おとぎショップ

2019年5月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31